恍惚の宿木 -玲瓏彩香-

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†-Take Me To The Ballpark/8.8.99-おさむ(8/9-01:21)No.4827


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4827Take Me To The Ballpark/8.8.99おさむ E-mail 8/9-01:21

18:00
ゲームは始まる
大の大人の男の球遊びだ
ただの遊びではない
木の塊を振りまわし
120〜145KMの硬質な球を打ち返し
牛の皮の手袋で飛んできた球の勢いを殺し
矢のような空気抵抗を無視する球を放り投げる
鍛えられた筋肉と育まれた感覚を持った男たちの遊びだ

17:30
夏の青い空は目を刺し
西の太陽は昼寝後の5歳の男の子のようにエネルギーに溢れ
東の空の入道雲はいきり立った馬のペニスのように屹立する
電車の窓から見えるのは暮れようとしない夏の夕時だ

17:45
残っているチケットはレフト側の外野と3塁側の内野席だ
レフト側のチケット売り場でダフ屋からチケットを買った
アンダーグランドな組織への献金だ
少し酒焼けをした親父は300円のディスカウントをしてくれた
1500円だった
目の前に広がる緑の遊び場
体系だった全体主義的ユニゾンする応援
遊びを楽しんでいるのか
いや
お祭りだ
自分のストレスを発散するための全体としてのエクソサイズだ
全体主義

Take Me To The Ballpark
例えば
ヤンキ−スタジアム
何かのコラムで読んだ
名物ピーナッツ売り
客に向かってピーナッツの袋を3種類の方法で投げる
カーブ
シュート
フォーク
全体主義
ハモンドオルガンに合わせてユニゾンする応援はあるかもしれない
ユニゾンしないブーイングはあるかもしれない
ウエーブはアメリカ産だ

20:00
左手に細く 夏目 漱石 を挟み
右手で客の合図を待つ
人工芝の鮮やかな緑を背にして
缶ビールの売った本数でその日の日給が決まる
ふてくされた男の子の売り子より
自分の精一杯の笑顔を張り付けた女の子の売り子の方が素敵に見えた

21:00
7回が終了したところで遊び場を出る
浜の星と竜の戦い
16対2で浜の星がリードしていた
全体主義
例えば
何人の人が
投手の142KMと126KMの緩急の差に
スコア−ボードに出る営業成績のような打率と本塁打の数に
ホームインしたばかりの投手を休ませずに初球打ちをして攻撃を終えた一番打者に
レフトの外野手がすぐに一歩を踏み出すために右足を引いて構えていたのを
気付いただろう

22:30
帰りの電車
隣の女の子2人はパチンコ台の機種の話し
向かいのカップルの女の子は男の子の右肩でつかの間の眠りに入っていた
お気に入りのバーに入り
冷えたビールを2杯飲んだ
遊び場から直行した
マスターに見せた
チケットを
8月9日(17:32発)成田エクスプレス
そう
明日の夜、西へ向かう
口元に浮かんだ微笑をぐっと呑み込んだ
そう誰も見ていない
それでいいんだ